FEMtools Model Updating (モデルアップデート)
構造解析シミュレーション、モデル検証、モデルアップデートのための統合解析
FEMtools Model Updatingは、次のモジュールを含みます。
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感度解析 -
パラメータの変化が構造物の応答にどのように影響するかを解析します。この情報は、モデルアップデートを含む他の用途に用いることができます。
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モデルアップデート -
対話形式でアップデートパラメータを変化させて、構造物の応答をできるだけ参照応答に一致するように改善します。
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調和外力の同定 - 実稼動モードシェープから調和外力を同定します。
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確率的解析 - 不確実性をパラメータに適用して、出力応答に関する確率分布を求めます。
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実験計画法 - 測定空間設計の効率的なサンプリング
感度解析
感度解析は、ばね剛性、材料の剛性、幾何学特性などのパラメータを変更することによりモデルの構造的応答がどのような影響を受けるかについて、その感じを解析者が掴めるようにするテクニックです。感度解析は次のような目的に使用できます。
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What-if解析 -
モードパラメータまたは他の応答タイプに関する仮定をモデル化した場合の影響を検討します。
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変動解析 - 設計空間全体における設計変数と応答の関係を見つけます。
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プリテスト解析 -
感度解析は、モードパラメータについてトランスデューサの質量負荷の影響を検討する場合のように、プリテスト計画にも適用できます。
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所定の応答とパラメータの組み合わせに対する構造物の感度が高い領域と低い領域を識別する -
これは、モデルアップデート用にどのパラメータと応答を選択すべきかを解析者が決定するのを支援します。
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モデルアップデート - 感度マトリックスは、
ゲインマトリックスの逆マトリックスです。予測応答値と参照応答値との差異を補正するのに必要なパラメータの変更量を見つけるために、その差がこのゲインマトリックスに掛け合わされます。
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設計最適化 -
モードパラメータ値または他の応答タイプをシフトするために構造物を変更する最適な場所を見つけます。
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音響感度 -
FEMtoolsによって計算される構造感度は、それらが音響感度の計算に使用される音響解析パッケ-ジにエクスポートすることができます。
感度係数は、パラメータ値の修正の結果として、応答値(例えば、共振周波数や質量)の変化を数量化します。応答とパラメータのすべての組み合わせに対して得られた係数は、感度マトリックスに保存されます。このマトリックスを分析することによって、構造物の感度が高い領域と低い領域に関する情報が得られます。カラ-グラフィックスは、これらの異なる領域を視覚化して、パラメータ選択の迅速な最適化を可能にするために利用することができます。
感度解析およびモデルアップデートは、ユーザーによる参照応答とパラメータの選択を必要とします。
感度係数は、微分法または有限差分法を使用して、FEMtoolsにより内部計算されます。計算が可能かどうかは、パラメータタイプや要素フォーミュレーション(要素タイプ)に由ります。別報として、外部で計算された感度係数をインポートすることができます。たとえば、NastranのSOL
200を使用して計算された感度は、FEMtoolsでモデルアップデート用にインポートすることができます。
主な機能
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パラメータとして、すべての要素の材料特性、幾何学特性、境界条件、集中質量、および減衰係数などが選択できます。
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応答として、質量、静的および動的変位、共振周波数、モード変位、MAC、FRFs、およびFRF相関関数などが選択できます。
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ローカルパラメータおよびグローバルパラメータに対する感度が得られます。
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内部感度解析(:絶対感度または正規化感度、有限差分感度および微分感度)が可能です。
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外部感度解析(Nastran SOL 200)のプリ/ポスト処理 が可能です。
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感度マトリックスおよびゲインマトリックスの解析が可能です。
構造応答
次の参照応答タイプが、感度解析用に選択できます。
- 質量、重心、および 質量慣性モーメント
- 静的変位
- 共振周波数
- 個別モード変位
- MAC値
- 周波数応答関数(FRF)値(所定の周波数での振幅)
- FRF相関関数値(シグネチャ相関および振幅相関)
- 実稼動変位、速度、または加速度
設計変数
以下のパラメータタイプが、感度解析用に選択できます。
- 材料特性 - ヤング率(等方性または直交異方性)、ポアソン比、剪断率、および質量密度
- 要素の幾何学特性 - ばね剛性、板厚、およびビ-ム断面特性
- 集中特性 - 集中剛性(境界条件)および集中質量
- 減衰特性 -
モード減衰、レイリー減衰係数、粘着減衰ダンパ-および構造減衰ダンパーの値
パラメータは、ローカルレベルおよびグローバルレベルのいずれでも選択できます。
- ローカルパラメータは、個々の要素を参照します。
- グローバルパラメータは、個々の要素の代わりに要素の集合(要素セット)を参照します。
モデルアップデート
FEMtools Model Updatinは、
有限要素モデルをテストデータのような参照目標にできるだけ一致するようにアップデートするためのユ-ティリティや手法を含んでいます。アップデートの方法は、シミュレートされた応答と目標値の間の相関が改善されるように、選択した(たとえば材料特性、ジョイント剛性などのような)要素物理特性を対話形式でアップデートする感度係数の使用に基づいています。応答のタイプは、静的変位、質量、モードデータ、FRFs、実稼動データ、あるいはMACのような相関値でも構いません。アップデートされるパラメータは、FEモデルの定義に使われるすべての質量、剛性、減衰が可能です。結果として得られるFEモデルは、より一層信頼性の高いものとして、それ以降の解析に利用することができます。
用途として、たとえばFEモデルの検証と高精度化、振動試験による材料の同定、FEモデルの縮小、損傷探索、...などが挙げられます。
モデルアップデートとは、
FEA結果とテストデータおよび参照データの間の相違は、モデルの粗いメッシュ、系の物理特性(例えば、線形FEM理論におけるモデル化の非線形挙動)、不適切な境界条件、要素特性、幾何学特性およびモデリングの不確実性などの起因します。これらの「誤差(エラー)」は実際、モデル化における情報不足によって生じ、FEA結果に対するそれらの影響を分析しなければなりません。そこで、FEモデルに関連したエラーを縮小するために改善処理を行わなければなりません。モデルアップデートは、FEモデルにおけるエラーを修正し、正確な構造データを構築するための機能と呼ばれます。
一般に、FEAデータとテストデータ間のエラーを改善するには、FEモデルの質量、剛性、減衰などのパラメータを修正することにより、モデルアップデートが可能となります。FEモデルアップデートの目的は、直接法と異なり、与えられた状態(解析モデル)の数学モデルを再生し、不確定なモデル化を仮定するパラメータに物理的な変更を加えることにより、モデルとテストデータ間の改善を達成することです。理論上、最適化されたFEモデルによって、任意の荷重条件、境界条件、衝撃などシミュレーションに使用することができます。また、そのモデルは現実的な変位や応力を推定するために使用することもできます。
FEMtoolsにおけるモデルアップデート
有限要素モデルアップデートには、さまざまな方法があります。FEMtoolsは、感度係数と重み値(ベイズの推定)を使った、実績のある対話形式の、パラメータによる、モードベースおよびFRFベースのアップデートアルゴリズムを使用します。テストデータとの相関をチェックするために使用されるFEAの結果は、現時点のアップデートパラメータ値を持つFEモデルを使って比較されます。モデルアップデートの方法は
、FEA結果とテスト結果との食い違いと、その食い違いを縮小するアップデートパラメータの変動量を決定するために感動係数を使用します。その後でアップデートパラメータの新しい値を使ってFEモデルを改善します。このプロセスは、相関関数を使って解析されたいくつかの収束基準を満たすまで繰り返されます。
主な機能
- アップデートパラメータおよびターゲットの広範な選択が可能です。
- 感度係数や重み値(ベイズの推定)を使った、対話形式、パラメトリック、モードベースおよびFRFベースの
、強力なアップデートアルゴリズムを備えています。
- 再解析に対して、商用または社内のソルバ-との統合が可能です。
- スーパー要素ベースのモデルアップデートが可能です。
- 結果を検査するための専用のテ-ブルとグラフィックスを備えています。
- 複数モデルの同時アップデート(MMU:後述)が可能です。
- 単一のラン(実行)で異なるパラメータタイプ と応答タイプを組み合わせることが可能です。
- アップデートパラメータのリンクが可能です。
- 相関関数の事前定義やカスタ マイズが可能です。
- ユーザーの確信度を表すアップデートパラメータおよびタ-ゲットの重み付けが可能です。
- アップデートに関する拘束(max per iteration, abs max, abs min)が可能です。
- 感度は、内部計算または外部計算のいずれで得られたものでも使用できます。
- 最適なパフォ-マンスのために、感度マトリックスのスケ-リングが自動的に行われます。
- 静的および動的再解析のための内部ソルバ-および外部ソルバ-のサポートが自動的に行われます。
- アップデートの間に、アップデートパラメータおよび系の応答のトラッキングが行われます。
- UNDO機能およびデータベースの復元機能 を備えています。
- アップデート後のFEモデルのエクスポート が可能です。
スーパー要素ベースのモデルアップデート
大規模なFEモデルを扱う場合、ボトムアップモデリングやテスト&アセンブリなどの方法が考えられます。これは、変更のない部分をモデル化するためにスーパー要素を使用するのがもっとも効率的です。残りの部分(=どのスーパー要素にも含まれない要素)においてアップデートパラメータが選択されれば、その残りの部分だけがアップデートされ、反復ごとにスーパー要素と結合されます。
複数モデルの同時アップデート
Multi-Model
Updating(MMU)は、異なる構造物の構成に対応して一つの有限要素モデルの異なるバ-ジョンを同時にアップデートします。各-の構成に対して一つのモードテストが存在します。たとえば、衛星用のスカラーパネルは配備の異なる段階の間にテストすることができ、各段階に対して一つのFEモデルが存在します。これはすべての構成に共通の要素特性をアップデートするための参照として役立つ
、より多くのテストデータ集合を提供します。そのような特性とは、たとえばジョイントの剛性や材料特性などです。その他の例として、燃料の異なるレベルでテストされる打ち上げロケット、あるいは同定する必要のある複合材料でできた異なる形状の試験片などが挙げられます。
調和外力の同定
加振力が未知で、しかも直接測定できない場合があります。一つの解決方法として、応答値(たとえば変位、表面速度など)を測定し逆法を適用して加振力を同定することができます。FEMtools
Model
Updatinは、レーザースキャナ-を使って測定された表面速度から、マフラ-の空洞内の圧力を同定するために使用された実績があります。
主な機能
- 動的応答の測定から外力を同定
- 外力の位置に対するマスクの定義
- 調和荷重または要素圧力荷重の同定
- 同定された外力のエクスポート
確率的解析
すべての物理特性はバラツキと不確実性の影響を受けます。この特性が構造物においてどのように伝播され、その結果出力応答にどのような変化をもたらすかを判断することは重要です。これは(たとえば
、DfSS--Design for Six
Sigmaのような)ロバスト設計に応用できますが、統計的相関や確率的モデルアップデートにも使用されます。
主な機能
- わずか数個のコマンドを使って、統計的確率分布と、ランダムにサンプリングされた非常に多くの物理特性を生かすことができます。
- FEMtoolsまたは外部ソルバ-を使って、各サンプルについて再実行の解析が可能です。
- 動的応答に対して、何百ものシミュレーションの実行に必要な時間の大幅な短縮のために、高速の近似的モード解析ソルバ-が使用できます。
- 感度解析およびモデルアップデート(前述)に対して使用できるすべてのパラメータと応答の選択が可能です。
- 出力応答のヒストグラム、平均、標準偏差を求めるためのポストシミュレーション処理機能を備えています。
- モンテカルロ・シュミレーション結果のインポート/エクスポート
- 不確実テストデータとの確率的相関分析
- 分布図のプロット
統計的相関
統計的相関は、点群や統計的数量(重心、平均、標準偏差など)間の類似点や相違点に関する視覚的および数値的な解析を指します。テスト手順や結果の抽出方法もまた、バラツキや不確実性の影響を受けます。したがってテストデータは、確率論的なシミュレーションから得られる、よく似た点群と比較できる点群と
考えることができます。
点群の位置、サイズ、形状を比較することによって、シミュレーションモデルの品質をさらに詳しく把握することができ、テストされる構造物の、真の物理学的な姿を表現できる可能性が得られます。
確率的モデルアップデート
確率的モデルアップデートとは、簡単に言えば、シミュレーションとテスト点群間の統計的相関やそれらの統計的数量を改善するために、設計パラメータおよびやそれらのランダム特性を修正することです。
設計の改善とロバスト設計
シミュレーションモデルが検証され、したがって現実的なものになり、利用できるようになると、製品の性能や安定性(ロバストネス)という面で設計を改善することができます。確率的モデルアプデ-ティングと同
様の手順を使うことによって、設計の目標や制約を満たすシミュレーション点群の位置、サイズ、形状を変更するために、設計パラメータおよびそれらのランダム特性が使用
できます。ほとんどの場合、これらの目標は、品質、耐久性、製造上の許容誤差、したがって全体のコストに関係する仕様に変換されます。
実験計画法
実験計画法(DOE:Design of Experiments)は、より効率的な設計空間サンプリング法の技術を提示します。
DOE技術は、より良い相関性を導くために適切な参照データのセットを得る方法として有効です。例えば、初期FEモデルと参照データ間の相関性が貧弱なため感度に基づいたモデルアップデートを行なうことができない場合などに使用されます。
特徴
- 標準サンプリング方法(階乗設計、コンポジット設計、ハイパーキューブ設計、最適設計)
- ユーザープログラムによるサンプリング
- FEMtools内部ソルバー、外部ソルバーの利用
- モード解析ソルバー・オプションの使用による迅速な解析
- サンプル・レスポンスのランキング
- FEデータベースへのサンプル適用
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